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039 適正な価格を受け取ることも、信頼を守ることです。


前回は、常連のお客様とは、ただ長く通ってくださる方ではなく、「選ぶ」という手間をサロンに預けてくださっている関係だというお話をしました。


「この人に任せたい」


そう思っていただけること。

それは、技術だけではなく、これまで積み重ねてきた時間や信頼の結果なのだと思います。


だからこそ、多くのサロンオーナーが、一つの悩みに向き合います。


それが、「価格」です。


「価格を変えたら、お客様が離れてしまうのではないか」

そう考えてしまう気持ちは、とても自然なものです。


長く通ってくださった方ほど、大切にしたい。

今まで支えてくださった方に、負担をお願いしたくない。


その想いは、お客様への感謝があるからこそ生まれるものだと思います。

しかし、ここで一度考えてみたいことがあります。


価格を変えないことが、本当にお客様との関係を守ることにつながっているのでしょうか。



その価格を決めた時、それは適正な価格でした


価格を見直す時、多くの方は「値上げ」という言葉に意識が向きます。


しかし、今設定している価格も、決して根拠なく決められたものではないはずです。


その当時の材料費。

その当時の技術力。

その当時、自分たちが届けられる価値。


それらを考えた上で、


「この価格なら、お客様にも選んでいただける。そして、自分たちも続けていける」


と考えて設定した価格だったと思います。


つまり、その時の価格は、その時代における適正な価格でした。


では、環境が変化した今も、同じ価格であり続けることが、本当に今のお客様への誠実な向き合い方になるのでしょうか。


材料費が変わる。

求められる技術が変わる。

お客様が求める価値も変わっていく。


変化しているものがある中で、価格だけを過去のままにしてしまうと、

いつの間にか


「今届けている価値」と「受け取っていただく価格」


の間に差が生まれていきます。



価格を守ることが、価値を守ることとは限りません


サロンを続ける中で、「価格を変えない」という選択をすることがあります。


お客様のために。

長く通ってくださる方のために。


そう考えているからこそ、その選択をするのだと思います。

ただ、その優しさが、少しずつ別の方向へ向かってしまうことがあります。


長期間、価格を変えないことは、意図せず低価格競争という領域へ近づいていくことにもつながります。


なぜなら、周囲の環境やコストが変化している中で、価格だけが判断材料として残りやすくなるからです。


そして、お客様がサロンを選ぶ理由が、少しずつ変わってしまうことがあります。


「このサロンだからお願いしたい」 ではなく、


「この価格だから通いやすい」 へと。



お客様との関係を、価格だけの関係にしない


長く通ってくださっていたお客様が、いつの間にか「安いから通う」という理由に変わってしまう。


それは、お客様にとっても、サロンにとっても、少し寂しい関係なのだと思います。


価格だけが選ぶ理由になると、より安い選択肢が現れた時、その関係は揺らいでしまいます。

一方で、


「自分の髪のことを理解してくれている」

「悩みに寄り添ってくれる」

「安心して任せられる」


そうした価値を感じてくださっているお客様との関係は、価格だけでは測れません。

私たちは、そしてきっとあなたも、目指したいのは


「安いから選ばれるサロン」 ではなく、


「このサロンだから選ばれるサロン」 なのだと思います。



価値は、伝えなければ届きません


ただ、ここで一つ大切なことがあります。


どれだけ素晴らしい技術や想いがあっても、それがお客様に伝わらなければ、存在していないのと同じように見えてしまうことがあります。


お客様は、美容師さんが積み重ねてきた経験を見ることはできません。


薬剤を選ぶ理由。

施術方法を変える理由。

その提案に込められた考え。


それらを言葉にして初めて、お客様は価値として受け取ることができます。


価格とは、その価値を届け続けるための土台です。


だからこそ、価格を見直す時に必要なのは、「いくら上げるか」だけではありません。


「これからも、どんな価値を届けていきたいのか」


そこを見つめ直すことなのだと思います。



適正な価格を受け取ることも、信頼を守ることです


値上げという言葉だけを見ると、お客様への負担のように感じることがあります。


しかし、その本質は、これからも大切なお客様と向き合い続けるための選択です。


技術を磨き続けるために。

良い商材を選び続けるために。

一人ひとりのお客様に、丁寧に向き合う時間を守るために。


適正な価格を受け取ることは、自分たちのためだけではありません。


お客様との信頼関係を、これから先も育てていくためのものなのだと思います。

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