043 お客様の言葉の、その奥を聞く。
- lonfieekyoto
- 7月25日
- 読了時間: 4分
前回は、技術や想いは、言葉にすることで初めて相手に届く価値になる、というお話をしました。
しかし、言葉にすることの難しさは、サロン側だけのものではありません。
お客様もまた、ご自身の悩みや理想を、最初から整理された言葉で伝えられるわけではないのだと思います。
「何となく扱いにくい」
「何となく変えたい」
「今の髪が、少ししっくりこない」
お客様は、まず感覚として悩みを抱えて来店されます。
その感覚を、一緒に言葉にしていくこと。
そこに、カウンセリングの大きな価値があるのではないでしょうか。
お客様が伝えてくださる言葉は、入口なのかも
お客様からいただく言葉は、とてもシンプルなものが多くあります。
「短くしたい」
「軽くしたい」
「まとまりやすくしたい」
もちろん、その言葉に応えることは大切です。
しかし、その言葉だけを受け取ってしまうと、本当に求めているものとは少し違う提案になることがあります。
例えば、「短くしたい」という言葉。
そこには、
朝のスタイリングを楽にしたい。
髪を乾かす時間を減らしたい。
今の自分に少し変化を加えたい。
暑さや季節に合わせたい。
さまざまな想いが含まれていることがあります。
同じ「短くしたい」という言葉でも、その背景によって、必要な提案は変わります。
だからこそ、私たちは、お客様の言葉を答えそのものとして受け取るのではなく、その奥にある想いへ目を向けることが大切なのだと思うのです。
察するとは、相手の中にある可能性を見ること
長くお客様と向き合ってきた美容師さんほど、言葉になる前の変化に気付くことがあります。
いつもより少し髪の扱い方が違う。
以前より、スタイリングについて話されることが増えた。
会話の中に、今までなかった悩みが出てきた。
こうした気付きは、経験の積み重ねから生まれる大切な力です。
私たちは、この力を「察する力」と呼べるのではないかと思います。
ただ、察するということは、自分の中で答えを決めることではありません。
「きっとこうだ」と結論を出すことではなく、
「もしかすると、こう感じているのではないか」
という小さな気付きを持つことです。
そして、その気付きをもとに、お客様へ問いかけてみる。
そこから、本当の会話が始まります。
良い問いかけが、お客様自身の気付きを引き出します
例えば、お客様が、「最近、髪が広がるんです」 と話されたとします。
ここで、すぐに施術方法を考えることもできます。
しかし、
「広がりが気になるのは、朝のお手入れの時間ですか?それとも、日中のまとまりの部分ですか?」
と聞いてみることで、お客様自身も気付いていなかった悩みが、少しずつ整理されていきます。
また、
「扱いやすさを優先したいですか?それとも、雰囲気を変えることを大切にしたいですか?」
という問いかけも、その方が本当に望んでいる方向を見つける助けになります。
大切なのは、こちらが答えを当てることではありません。
お客様自身が、
「そう、それが気になっていたんです」
と、自分の気持ちに気付けることなのだと思います。
聞くことは、相手の中にある答えを一緒に探すこと
カウンセリングというと、質問をして情報を集める時間だと考えることもできます。
しかし、本当に大切なのは、情報を集めることだけではありません。
お客様自身もまだ形にできていない想いを、一緒に整理していく時間なのだと思います。
表情を見る。
過去の会話を覚えている。
小さな変化に気付く。
そして、感じたことを言葉にして問いかける。
その積み重ねによって、お客様は少しずつ、
「この人なら、自分でも分からなかったことを分かってくれる」
と感じてくださるのではないでしょうか。
言葉を引き出す力も、美容師の大切な技術です
美容師さんの技術は、ハサミや薬剤を扱う技術だけではありません。
お客様の中にある、まだ言葉になっていない想いを見つけ、それを一緒に形にしていくこと。
それもまた、プロとして大切な技術の一つなのだと思います。
042でお話ししたように、価値は言葉になって初めて届きます。
そして、その言葉は、一人で完成させるものではありません。
美容師とお客様が向き合う時間の中で、少しずつ生まれていくものです。
お客様の言葉の、その奥を聞く。
それは、髪の悩みだけを見るのではなく、その方が本当に望んでいる未来を見ることなのかもしれません。
次回は、その想いをもとに、専門的な知識をお客様が受け取れる価値へ変換する「提案」について考えていきます。
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