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048 価値を届ける覚悟と、適正な対価

美容室で、お客様が本当に選んでいるものは何でしょうか。

少し、普段の買い物を思い浮かべてみてください。

例えば、洋服を購入するとき。

お客様は、目の前にある商品を見ることができます。

色を確認する。

素材に触れる。

試着して、自分に合うかを確かめる。

その上で、価格と価値を照らし合わせながら、自分に必要かどうかを判断します。

もちろん、実際に使い続ける中で初めて感じる価値もあります。

着心地。

耐久性。

長く愛用することで生まれる満足感。

それでも、購入する瞬間には、目の前にあるものを判断するための材料があります。

では、美容室でお客様が選んでいる価値はどうでしょうか。

お客様の前に、完成した髪が置かれているわけではありません。

数時間後の仕上がり。

翌朝、髪を扱う時の感覚。

これから続いていく毎日の変化。

お客様は、まだ形になっていない未来へ期待を持って、ご来店されています。

美容師が届けているものは、目の前にある施術だけではなく、その先に続く時間なのだと思います。

お客様が選んでいるのは、メニューの名前でしょうか


例えば、お客様が「髪質改善」というクーポンを見て来店されたとします。


その方が求めているものは、「髪質改善」という施術そのものでしょうか。

もちろん、その技術への期待があります。


しかし、その先には、もっと具体的な願いがあります。

朝の準備にかかる時間を少し減らしたい。

年齢とともに変化してきた髪のまとまりにくさを整えたい。

美に携わる仕事だからこそ、人から褒められるような髪でいたい。

忙しい毎日の中でも、鏡を見る時間を少し前向きなものにしたい。


お客様が選んでいるのは、メニューそのものではなく、その施術によって生まれる日常の変化なのだと思います。


だからこそ、美容師が見るべきものは、予約表に書かれたメニューだけではありません。

なぜ、この方は今日ここへ来てくださったのか。

何に悩んでいるのか。

どんな未来を望んでいるのか。


そこへ向き合うことから、本当の提案が始まります。



提案とは、知識と技術を届けるための時間です


美容師は、日々たくさんの知識と技術を磨いています。


薬剤への理解。

毛髪への知識。

カットや施術の技術。

ホームケアへの提案力。


それらは、何のために磨いてきたのでしょうか。

目の前のお客様にとって、より良い未来をつくるためですよね。


だからこそ、提案とは単にメニューを増やすことではありません。

美容師が積み重ねてきた知識と技術を、その方に必要な形へ変えて届ける時間です。


例えば、カウンセリングを通して、


「今回の施術でも変化は感じていただける。でも、理想の状態へ近づくためには、もう一つ必要な工程がある」


そう感じることがあります。

その時、大切なのは、お客様へ理由を丁寧に伝えることです。


「今の髪の状態を見ると、ここを整えることで、もっと扱いやすくなると思います」

「ただ、料金も変わります。今日取り入れる方法もありますし、次回に分けて考える方法もあります」

「今の生活やご予算も含めて、一緒に考えていきましょう」


選択肢をお渡しする。

そして、最後に決めるのはお客様です。



お客様の判断力を、軽く見てはいけません


少し考えてみてください。


あなたは、身近な人の変化に気づくことはありませんか。


いつもより返事が短い。

表情が少し違う。

声の雰囲気が違う。


「何かあったのかな」

そう感じた経験は、きっと誰にでもあると思います。


では、なぜ自分がお客様から感じ取られることはないと思うのでしょうか。


お客様は、美容の専門知識では美容師に及ばないかもしれません。

しかし、一人の人間として、これまで多くの経験を積んできています。


20歳のお客様でも、20年間、人との関わりの中で生きています。

家族。

友人。

仕事。


さまざまな関係の中で、


「この人は、本当に自分のことを考えてくれている」

「この人は、自分の都合を優先している」


という感覚を育ててきています。



あなたの頭の中の吹き出しは、見えていませんか


美容師の頭の中には、目には見えない吹き出しがあります。


「この方の髪を、もっと良くしたい」


という想いなのか。


「もう少し売上につなげたい」


という想いなのか。


もちろん、その文字が実際に見えるわけではありません。

しかし、その背景にある想いは、言葉や態度を通して伝わっていきます。


声のトーン。

表情。

提案するタイミング。

言葉に込める熱量。


「この方には、もっと綺麗になれる可能性がある」

「毎日のお手入れを、少しでも楽にしてあげたい」

そんな、お客様の未来を考えた吹き出しは、自然と相手にも届いていきます。


一方で、

「どうすれば追加してもらえるか」

「どうすれば単価を上げられるか」

という自分の都合を優先した吹き出しも、意図せず感じ取られてしまうことがあります。


だからこそ、大切なのは話術やテクニックだけではありません。


どんな想いから、その言葉を届けているのか。

そこにある目的が、最終的には相手へ伝わるのだと思います。



長く続く関係には、未来まで考えた提案が必要です


お客様との関係は、その日の施術だけで完結するものではありませんよね。


今日の仕上がり。

明日の朝の扱いやすさ。

数ヶ月後の髪の状態。


そして、その方がこれから先も、自分らしく美容を楽しめること。


美容師が向き合っているのは、目の前の数時間だけではなく、その先に続いていく時間なのだと思います。


例えば、理想の髪へ近づくために、本当は必要な工程がある。

でも、すべてを一度に行うことがお客様にとって最善とは限りません。

その時に考えることは、


「今日、どれだけ多くの施術を受けていただくか」

も大事ですが、


「この方にとって、どの選択が一番良い未来につながるのか」

ということも考えてみてほしいのです。


今日行う。

次回へ分ける。

ホームケアで支える。


その方の生活まで含めて考えた提案が、長く続く信頼を育てていきます。



お客様を大切にすることと、適正な対価を受け取ることは、同じ方向にあります


ここで、一つ気づいていただきたいことがあります。


お客様を大切にすること。

そして、適正な利益を受け取ること。


この二つは、別々のものとして考えられがちです。

しかし、本当に必要な価値を届け、その価値に責任を持つこと。

その積み重ねの先に、適正な対価があります。


つまり、お客様を大切にすることと、適正な利益を受け取ることは、同じ方向を向いているのだと思います。

なぜなら、サロンが健全に続くことで、初めてその価値を届け続けられるからです。


スタッフを守る。

学び続ける環境をつくる。

新しい技術へ投資する。

未来へ続く場所を育てる。


そのために、利益があります。

お金は、目的ではありません。

大切にしたい人や時間を守るための道具です。


お客様との関係を長く育てるため。

スタッフとの未来をつくるため。

サロンという場所を次の世代へつなぐため。


価値を届ける覚悟を持ち、その価値に見合った対価を受け取ること。


それもまた、お客様を大切にする一つの形なのだと思います。



この記事を書いた意図


この記事では、「価格」と「価値」の関係について考えました。

美容室における提案は、単に施術メニューを追加するためのものではなく、お客様が望む未来へ近づくために、美容師の知識と技術を届ける時間です。


お客様を大切にすることと、適正な対価を受け取ることは、対立するものではありません。

長く続くサロンづくりには、価値を正しく届け、その価値を未来へつなげるための経営視点も必要だと考えています。


この記事を書いた人

株式会社Lonfiee

理美容業界に携わる中で、サロン様や美容師の皆様と関わりながら、「長く続くサロンづくり」について考え、発信しています。


商品や技術の情報だけではなく、

お客様との関係づくり。

スタッフとの向き合い方。

サロン経営に必要な視点。

日々の小さな気づき。


そうした「長く続くために大切なこと」を、共に考える場所として「サロン成長研究所」を運営しています。


Long Field

長く、共に、縁を大切に。

その想いを、これからも理美容業界へ届けていきます。

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